産業立地ナビTOKYO

株式会社 TL Genomics(小金井市)

業種 : 環境・医療・福祉
作成日: 平成30年3月19日
更新日: 平成30年3月29日
代表取締役・久保知大氏
大学に眠るシーズ(種)を産業ベースにのせる
出生前診断からはじまる開発型ベンチャー企業の挑戦

出生前診断における新しい検査法

少数精鋭の体制で研究に取り組んでいる
 妊娠中、胎児に先天性・遺伝性などの疾患がないかを調べる出生前診断。現在日本では高齢出産のケースなど一部の妊婦のみが受診していますが、アメリカ・ヨーロッパでは妊娠中の一般的な検査のひとつとして定着しつつあります。既存の出生前検査のうち、羊水検査は流産のリスクがあり検査を受けることと引き替えにリスクを負うことが求められました。また、NIPTという検査は採血だけで検査できる安全性がメリットですが、ダウン症など限定的な疾患を非確定診断で検査するものです。今回取り上げる開発型ベンチャー企業、株式会社TL Genomicsは新しい出生前診断法を開発することにより、リスクをゼロに近づけることに成功しています。その取り組みについて、代表取締役・久保知大氏に伺いました。

数百種類の疾患についてリスクなく確定診断できる

小金井市にある国立東京農工大学キャンパス内にオフィスがある
 7年前に登場したNIPTという出生前検査は、母親の血液を採取し、そこに含まれる胎盤由来のDNA断片解析をすることでおもにダウン症の確率を判定するものでした。確定診断を望む場合は、羊水を採取する検査が求められ、子宮に直接針を刺すため胎児に危険が及ぶ可能性があります。「私たちは母体の血液に含まれる胎児の細胞を単離することで、胎児のゲノム情報を得るという新しいアプローチを開発しました。そのメリットは大きく、まず採血のみですから母体への影響、流産のリスクはありません。診断の正確性においてもゲノムそのものを見ているので疾患を確定診断のレベルで発見できます。調べられる疾患は数百種類、昨今話題になっている発達障がいなども検査できるようになるかも知れません。重篤な疾患でなくても、早いうちから子どもについて知っておくことで、適切なサポートを受けられるメリットは大きいと思います」。

目指す市場は出生前診断の普及が進む海外

社外秘の技術力に関係する業界も注目している
 出生前診断については、命の選別という言葉とともに生命倫理上の問題が指摘されてきました。「私たちのようなバイオ関係のベンチャーというのは、ゲノム、人間の設計図を扱うわけですから、倫理の問題がつきまといます。ただそれを避けるのではなく、正面切ってぶつかっていくことが大切だと考えています。技術の進歩によって倫理もまた新たな局面が生まれ進歩していくからです。そういう意味で、倫理とは静的なものではなく動的なもの。出生前診断が新しい高みに達したとき、それを現代に生きる私たちがどれだけ許容できるのか。選択肢の幅を広げ、選んだ答えに応えられる体制を整えたい」。
 TL Genomicsの技術は研究開発の段階ですが、今後の市場としては出生前診断そのものに慎重な姿勢をとる日本ではなく、海外展開を主軸に考えているそうです。「重要な検査ですから、職人技に頼るような技術ではなく、オートメーション化によって、誰もが等しく正確な診断が得られるように。目標としては一年後くらいにはひとつのサービスとして提供していきたい(2018年1月現在)」。

大学に眠るシーズを育てるチャレンジングな存在に

地道な行程の中に技術力が光る
 出生前診断はTL Genomicsの取組みの入り口であり、その後の展開としてむしろ大学に眠るシーズを商業ベースに押し上げるシステムこそを、事業主体にしていきたいと久保氏。「私たちは検査屋ではなく技術屋ですから、検査技術そのものは外に出して、検査会社で運用していただきたい。注目しているのは、大学に眠るたくさんのシーズ(種)です。このシーズを商業ベースに乗せようとするとうまくいかないことが多い。大学は独創性というベクトルを突き詰めるのに対して、産業界では操作性や利便性が求められるからです。このズレを解消するところにビジネスチャンスがあると思います」。
 TL Genomicsの目線はさらなる未来へと向けられています。
株式会社TL Genomics
住所:小金井市中町2-24-16 農工大・多摩小金井ベンチャーポート♯201
URL: http://tlgenomics.com/
小金井市の関連情報
北多摩エリアの関連情報