産業立地ナビTOKYO

江東区

震災復興技術支援フォーラム

作成日: 平成24年3月23日
更新日: 平成27年2月12日
震災復興技術支援フォーラム
昨年3月11日、東北地方を中心に未曽有の被害をもたらした東日本大震災。その後、政府、地方自治体などが復興に向けてさまざまな施策を打ち出しています。東京の中小企業の技術支援を行っている独立行政法人東京都立産業技術センター(都産技研)では、復興には何より産業界が元気になることが不可欠だと認識しています。とりわけ、日本の産業界を支えている中小企業が元気になることが重要です。
そこで、都産技研では昨年の6月から「震災復興技術支援フォーラム」を開催し、「ものづくり」に携わる方々とともに「節電」「リスク管理」「放射線対策」など、多くの問題を考えてきました。2月2日には株式会社新銀行東京との共催で、「震災復興支援フォーラム」を開催しました。5回目となるフォーラムにはおよそ160名の方々が参加し、宮城県産業技術総合センター・鈴木康夫所長、株式会社新銀行東京・寺井宏隆社長、独立行政法人東京都立産業技術センター経営企画部・山本克美部長、中央大学大学院戦略経営研究科・小林三郎客員教授(元本田技研工業経営企画部長)の講演に、熱心に耳を傾けていました。
以下では各氏公演の要旨をご紹介します(文責/編集部)。
フォーラムが開催された東京都立産業技術センター
フォーラム会場

「今、被災地で求められている技術支援」

宮城県産業技術総合センター所長 鈴木康夫氏
震災後、私たちは「被災地の企業が求めていることは何か」「困っていることは何か」を調査しました。まずは「工場再建と建築制限」の問題です。宮城県では無秩序な開発防止のために建築制限規制を設けていましたが、問題解決のために昨年11月にこの規制を解除しました。次に「施設・設備」の問題です。大手企業は被害のなかった他地域の工場に生産拠点を移行することが可能ですが、地元の中小企業はそうはいきません。とくに被害が甚大だった海岸に近い企業は深刻で、内陸部に移転せざるをえないというのが大きなムーブメントです。そして「雇用」の問題。じつは有効求人倍率はバブル経済のころに匹敵する数値なのです。とはいえ、求人が多いのは、保安・警備員、建設作業員、建築・土木技術者、薬剤師などに偏向しています。ところがほかの職種、とりわけ工場の技術者にはなかなか職がない、というのが現状です。
そこで、私たち宮城県産業技術総合センターでは従来の「事業推進構想」を見直した「新構想」のもとでの取組みを行っています。一つが「企業のグループ化」のお手伝いです。たとえば、耳鼻咽喉科用の椅子で高いシェアを誇っていた気仙沼の企業と、被害が比較的少なかった工場とのグループ化が実現しました。ほかにもアルマイト企業のグループ化、被害が甚大だった仙台空港に近い岩沼地区の9社が連携することになりました。
新構想の根底には、「イノベーションなき復興はいつの日か衰退する」とのコンセプトをもって取り組んでいます。実際、グループ化と並行して新技術による生産を開始した企業もあります。ここで東京の企業の皆さまには、ぜひ、被災地の企業への資金援助やコラボレーションなどを考慮いただきたいとお願いいたします。
※写真は鈴木康夫氏

「新銀行東京をいかにして再建してきたか」

株式会社新銀行東京代表取締役社長 寺井宏隆氏
株式会社新銀行は2005年に中小企業への融資を主な業務として創業しましたが、3年後には資本金1000億円をくいつぶし、新たに400億円もの公的資金を注入せざるをえない経営状態に陥りました。私は2009年、こんな状況下の銀行の社長に就任したわけですが、本日は黒字経営にいたるまでの当行のさまざまな取組みについてお話したいと思います。
私たちは、何が失敗だったのか、徹底的に検証しました。まず、リスク管理の失敗があり、3年間で500億円もの貸し倒れが生じました。それは企業データをインプットするだけで融資の可否を判断するスコアリングモデルに基づく貸し出しを積み上げたためです。次にコスト高体質があげられます。ビジネスモデルも固まっていないのに、10店舗、行員750名の規模になっていました。
これらの失敗を2度と繰り返さないことが、2008年以降の至上命題となりました。元来、中小企業を顧客とする金融機関の営業マンは、社長さまなどと頻繁にお会いしてその企業のことを肌でつかんでいたものです。そこで、スコアリングモデルに依存せず、伝統的な審査方法に基づく新勘定をスタートさせました。経営陣によるモニタリング会議も毎月行うことによって、リスク管理をかなり回避できるようになりました。コスト管理も徹底したのはいうまでもありません。店舗は本店の1店舗のみとし、行員も180名強とし、そのほか事務用品、備品などの無駄も徹底的に排除しました。
おかげさまで、2008年こそ106億円と赤字を引きずりましたが、2009年には黒字に転じて16億円の当期利益を計上し、以後、2010年13億円、2011年11億円、2012年上期1億円の黒字となっています。当行はいま、やっと自力で立っていられるようになりました。しかし、いまなお予断を許さない状態にあります。今後もリスク管理、コスト管理にはじゅうぶん留意して、できるだけ多くの中小企業の皆さまのお役に立ちたいと思っています。
※写真は寺井宏隆氏

「都産技研の震災復興支援~“これまで”と“これから”」

地方独立行政法人東京都立産業技術センター経営企画部長 山本克美氏
3月11日以降、都産技研が取り組んできた復興支援策についてご紹介させていただきます。まず、震災で経営的に苦しくなった都内中小企業や、被災地企業を対象に、都産技研の各種施設の利用料金を50%減額することにしました。それと平行して、節電・省エネや放射線に関する正しい情報をお伝えするため、全5回の震災復興技術支援フォーラムも企画しました。本日はその5回目にあたります。
技術的な支援では、電力の見える化支援や省エネアドバイスなどを無料で行っています。「電力の見える化」というのは、ただやみくもに節電するのではなく、照明器具の照度測定と電力測定を行い、必要な照度を維持しながら省エネを実現するというものです。工場では各機器の電力消費を測定したうえで、優先順位をつけながら省エネを行うことができます。
節電とともに大きな関心を呼んでいるのが放射能汚染の問題。都産技研では工業製品の放射線量測定試験を実施しており、都内中小企業は無料、被災地企業は半額でご利用いただけます。これまでの依頼内容のうち、輸出品の測定が全体の60%を占めているため、英訳した成績証明書も発行しています。
東京都からの依頼では、昨年3月以降、農畜産物の放射能検査を行いました。また、被災地に対しては、4月に福島県で放射線量測定試験を、7・8月に岩手県・宮城県で工場などの省エネ測定を行いました。
最後に、復興支援の“これから”を述べさせていきます。まず、技術支援フォーラムは来年度も継続します。いっぽう被災地では、仮設住宅の遮音性能特性測定を行い、今後の音響事業の知見に役立てようと考えています。さらに、廃木材中の塩素濃度の分析方法の開発にも着手する予定です。
※写真は山本克美氏

「新事業、新商品を創造する方法 ~ホンダ的熟慮のススメ~震災を超えてものづくり企業に求められる本質に迫る」

中央大学大学院戦略経営研究科客員教授・元本田技研工業経営企画部長 小林三郎氏
震災後、リスク対応ということが広くいわれるようになりました。確かにそれも大切なことですが、新しいことをやらなくては組織はだめになってしまいます。私は30年以上にわたる(株)本田技術研究所勤務時代、「オペレーション」と「イノベーション」が組織にとっていかに大切であるか、思い知らされてきました。オペレーションとは、論理的に正解を追求する作業、イノベーションとは、ユニークであり、かつ本質的である物事を発掘する作業です。おもしろいことに、経営学の知識がなくてはオペレーションはできませんが、イノベーションではそれらの知識がかえって邪魔になってしまいます。40歳を超えた方は自分でイノベーションをなさらず、若い人に「本質とは何か」と、聞いてみてください。そして、相手が述べる本質とコンセプトを見きわめてください。
本質とコンセプトは、本田技研のイノベーションの現場で絶えず追求しているものです。企業の本質目的は、新しい価値をつくること。創業者の本田宗一郎も、「研究所は技術の研究をするところではない。技術は手段であって、新価値づくりが目的である」と、いい続けてきました。ところで皆さんは、ご自身の企業の目的を一言でいえますか? だれにでもわかりやすく説明できないものは、結局は自分のなかで消化しきれていません。企業の目的や理念、さらにはご自身の生きる目的などを一言でいえるよう、思考訓練をくり返し行うことをお勧めします。
コンセプトとは、ユニークな視点でとらえた物事の本質のこと。コンセプトを磨くには、とにかくたくさんの現場を見るしかありません。たとえば、おばあちゃんの原宿といわれる巣鴨地蔵通商店街、あるいは、社会現象となったメイドカフェ。これらの場所に行ったことはありますか? 私はどちらにも行きました。高質な原体験を重ねたあとでは、異質な人と本質的な議論を交わしてください。そして、失敗を恐れずにやってみることですね。
私は多くの反対のなか、16年間研究を続け、日本で初めてエアバッグを商品化することができました。イノベーションには、確固たる本質とコンセプトをもつことが、何よりも大切だと思っています。
※写真は小林三郎氏
URL:http://www.iri-tokyo.jp/
住所:東京都江東区青海2-4-10
TEL:03-5530-2521(広報室)
城東エリアの関連情報