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フォーカス2016
TOKYO発の”テクノロジー”と”人”を育てるキーパーソン

多様性ある中小・ベンチャー企業が都市の魅力をつくる—地域、世界に羽ばたく人材を育成

作成日: 平成29年4月20日
更新日: 平成29年4月20日
法政大学経営学部 教授 <br/>
稲垣 京輔 氏

法政大学経営学部 教授
稲垣 京輔 氏

 東京のような大都市は、新しい産業を牽引する人材を育てて国内外に供給する大きな役割を担っています。事業創造論と中小企業論を専門にする法政大学の稲垣京輔教授に、特色あるインキュベーション拠点や東京における中小・ベンチャー企業を育てるための提言をうかがいました。

プロデューサー人材の育成

-現在の研究内容について教えてください。

 クリエイティブ産業における同業種や異業種間の協業や連携について、10年間のフィールドワークをおこなってきました。とくに大阪市内に立地するクリエイティブ産業の支援機関を中心に、都市型産業再活性化の取り組みについて調査させていただき、クリエイター同士の横のつながりや、地元の製造業者との協業のしくみを如何に創出していくかという変革の現場を見てきました。支援機関の重要な役割は、創業支援からプロデューサー人材の育成へとシフトしてきています。単に事業の自立発展を目指す創業の担い手と彼らに必要な経営資源を結びつける結節点としての役割を果たしているだけではありません。

 調査の中でわかったことは、様々なイベントやプロジェクトを通じて、プロデューサーが持つ協業のマインドセットやノウハウが伝播していくということ。そして、その伝播力を利用することで、より高度な協業能力を持った人材を引き込むほど、事業創造の機会やそれを担う人材の層が厚みを増し、ひいては地域の産業を再生させる大きな原動力となりうるということでした。

協業のコミュニティが中小企業を活性化する拠点に

-ものづくりを支援するクリエイターの集積や異業種との連携といった取り組みは東京でもできそうです。

 台東デザイナーズビレッジや、すみだクリエイターズクラブなど、地元にある既存の資源をこれまでとは異なる方法で活かしながら協業するしくみがいくつか出てきています。単なる貸しオフィスやインキュベーションとしてではなく、協業のコミュニティを形づくる活動が、今後も広がっていくのではないでしょうか。

-法政大学は全国から学生が集うかと思いますが、学生を指導される際にどんなことを意識していますか。

 学生はハイテクベンチャー企業が生み出す新しいテクノロジーや製品にばかり関心を向けがちですが、興味の対象をモノからビジネスのしくみへと移行させることで、旧来型の産業にも目を向けられるようにしています。例えば、商店街や伝統産業など、既存の商材や産業に新たな価値を見いだし、普及するしくみについて学び考えることもその一つです。いずれは地域活性化の担い手になるような、プロデューサーとしての意識を持った人材が育ってほしいですね。さらに今後は、国内需要は先細り、海外需要を国内に取り込むことが求められる時代。海外でも活躍の場が広がるような人材がもっと出てきてくれることを望んでいます。できるだけ多くの学生に、変革の担い手となるような意識を根付かせたいと思っています。

ベンチャーを組み込んだ産業成長モデルを目指せ

-中小企業の産業振興の視点から、東京の魅力をどのようにとらえていますか。

 日本の中では人材や価値観の多様性がもっとも顕著で、人材、資金、知識、情報が集まる条件が整っているのではないでしょうか。ただし、商習慣やコミュニケーションの違い、大企業やベンチャー企業、NPO、大学など組織や業界の“壁”によって、活用できる資源が分断されていることが問題です。“壁を乗り越えて”いかないと相乗効果を発揮できません。それでも、昨今では世界的に、大企業が様々なベンチャーへの投資に対し意欲的になってきており、そのトレンドが、東京でも見られるようになった点に注目しています。なぜなら、企業活動が国際化していく今日において、都市の本質的な産業競争力は、ベンチャー企業の創出だけでなく、成長を組み込んだエコロジー(生態系)を確立できるかどうかが重要だからです。

-最後に、先ほど「壁を乗り越える」というキーワードがありましたが、東京という都市の発展同時に他の都市の発展-地方創生ともいえると思いますが、そのために目指すべきことは何でしょうか。

 東京の街は、都心部への居住の回帰やインバウンドの滞在者の増加もあり、生活空間としての魅力を高める必要が出てくると思います。今後は、それぞれの市区の魅力や特徴をどのように活かすかという視点を含んだ成長戦略や活性化戦略が不可欠になるでしょう。課題や危機感を共有するコミュニティを核としながら、地域に根差した中小企業だけでなく、大手企業や行政、教育機関などが持つさまざまな資源を動員し、さらにNPOやフリーランス人材をも巻き込んで課題に取り組むことが、今後の新しい産業を芽吹かせる上での原動力にもなります。こうした取り組みを進めるためには、壁を越えて俯瞰できる立場から新たな価値やしくみを生み出せるような人材が不可欠です。大学のような教育機関は、こうした人材育成の面で少なからぬ役割を果たせると思っています。

略歴=2000年、東北大学大学院経済学研究科博士後期課程修了後、尚美学園総合政策学部講師、横浜市立大学経済研究所助教授、同国際総合科学部准教授を経て、09年4月より現職。企業家活動を活性化する組織、経営者の行動をはじめ、企業家活動が地域に根付くプロセスの解明に取り組んでいる。
法政大学大学院経営学研究科
http://hbs.ws.hosei.ac.jp/major/teacher.html

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