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ブーム追い風にVR技術をBtoBに生かす—東京五輪も大きなターゲットに

作成日: 平成29年4月20日
更新日: 平成29年4月20日
カディンチェ株式会社<br/>
代表取締役社長<br/>
青木 崇行 氏

カディンチェ株式会社
代表取締役社長
青木 崇行 氏

 これまで、多くのベンチャー企業が先端技術活用し、社会ニーズを顕在化させたモノやサービスを広めてきました。カディンチェの青木崇行社長は、360度パノラマ映像処理の技術を活用し、バーチャル・リアリティ(VR=仮想現実)を駆使した、重機の遠隔操縦システム、鉄道事業者向け安全教育ソリューションなどを提供しています。青木社長に、現在の取り組みを通し、テクノロジーに強みをもつベンチャーが東京で活躍するためのヒントをうかがいました。

VR技術を企業のマーケティングやプロモーションに生かす

-VR(仮想現実)ブームを追い風に、今は、何に取り組んでいらっしゃいますか。

 最近では、遠隔地にいながら実際に搭乗している感覚で重機を操縦できる臨場型映像システムを、建設会社と協力して開発しました。また、製薬会社の工場のVR体験が可能なバーチャル工場や、精巧な時計の内部構造を表す3D(3次元)時計シミュレーターといったものも制作しています。VR技術を、企業のマーケティングやプロモーションに活用するBtoB(企業間)型ソリューションの提供が、当社のビジネスの基本となっているところです。

-会社設立時から今日までの歩みについて教えてください。

 大手電機メーカーに入社して、研究所で画像信号処理の研究開発に携わっていたのですが、研究所の閉鎖などから、同僚と二人で2008年に起業しました。当時、仮想空間を舞台にしたオンラインゲームの『セカンドライフ』がブームとなっており、その実写版のようなものを目指したのです。立ち上げから3年間は苦労の連続でした。4年目あたりから、徐々に仕事が増えてきて、一つの実績が次につながり、横展開も効くといった好循環が生まれて、今日に至っています。VRが何に使えるのか、よく分からない"妄想"の段階から、具体事例が出てくる段階に移ったのが、当社を大きく後押ししてくれています。

クラウド上に価値を集約するネットワークモデル構築を目指す

-これからの方向性やビジョンをお聞かせください。

 世界でも最先端にあると自負している360度パノラマ映像処理の技術・ノウハウにさらに磨きをかけていきます。ディープラーニング(深層学習)などAI(人工知能)の研究にも力を入れており、クラウド上にすべての価値を集約するようなネットワークモデルを創りたいとも考えています。ただ、会社の成長に関しては、あまり急拡大を求めずに、これまで通りの地道な経営を続けていきたいですね。

-VR技術はオリンピックなどスポーツイベントでの活用も期待されています。

 リオ五輪でもVRが使われていました。バスケットボールや野球などでも広がりつつあり、スポーツとVRの親和性は高いと思います。2020年の東京五輪は先端のVR技術を世界にアピールする絶好の機会ともなるので、当社も良い提案をして、その一翼を担いたいですね。

-VRが何に使えるかよくわからない"妄想"の段階から、企業からこういう使い方ができるのではないか、という引き合いが来る時代になったということですね。

 頭に装着するディスプレイ装置で、ウエアラブルコンピューターのひとつであるヘッドマウントディスプレイ(HMD)が開発されるなど、VRの普及を加速させる装置が数多く登場したことにより、当社の事業機会も急拡大しています。大規模なスポーツイベントもその一つですが、既存の企業では解決できない隙間を提案してゆきたいと考えています。

ベンチャーでも優秀な外国籍の技術者が活躍中

-最後に、東京を拠点として事業を進めることのメリット、デメリットをどう感じていますか。

 関連技術を提供する側はもちろん、ユーザーサイドも先進のものを求めるという環境が刺激になり、モチベーションとなっているのが大きなメリットです。一方、経営者としては、技術者の採用が難しいのがつらいところです。当社ではハノイ工科大卒のベトナム人が働いていますが、そうした優秀な外国人がたくさん東京に集まって、ベンチャーにもどんどん入社するようになってほしいですね。

略歴=2003年、慶應義塾大学修士課程修了。03~06年、ソニーに勤務。08年、カディンチェを共同設立し、代表取締役に就任。この間、慶應義塾大学博士課程に入学し09年に博士取得。08年には、ネパールなどで青少年を対象とした環境教育事業を行うNPO「パックス・アース」を設立し理事長に就任。アスリートたちの社会貢献の活動基盤「アスリートソサエティ」の事務局業務にも携わっている。
カディンチェ株式会社
http://www.kadinche.com/

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