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フォーカス2016
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人に役立つものを創るのが本懐—高齢化で膨らむニーズに応える

作成日: 平成29年4月20日
更新日: 平成29年4月20日
東京理科大学工学部 教授<br/>
小林 宏 氏<br/>
(ウエアラブルロボットの開発ベンチャー、イノフィス創業者)

東京理科大学工学部 教授
小林 宏 氏
(ウエアラブルロボットの開発ベンチャー、イノフィス創業者)

 少子高齢化時代を迎え、スーツのように身につけて重いものを運べる「ウエアラブルロボット」は、介護やリハビリ、荷物を運ぶようなサービス業、農業、物流分野などで広く活用されています。同分野の一角を担うベンチャー企業、イノフィスの創業者であり、東京理科大学工学部で教鞭も取る小林宏教授に、社会課題を解決する技術開発の在り方や東京の可能性についてお話をうかがいました。

実ニーズに応える目的でロボットベンチャーを立ち上げ

-まず、主力製品の「マッスルスーツ®」について、どういうものなのか、説明をお願いします。

 人が重いものを持ち上げたりするのを支援し、身体にかかる負担を軽減する筋力補助装置の一種です。スーツのように身につけて使うため、『ウエアラブルロボット』という呼び名もあります。介護やリハビリなど医療・福祉の現場はもちろん、農業、物流、製造、建設といった各方面の “きつい作業”を軽くするのに役立ちます。これまでの導入実績は約3,000台で、ウエアラブルロボットの中では一番普及していると自負しています。

-東京理科大発のベンチャー企業として、よく知られています。会社立ち上げのいきさつや思いを教えてください。

 もともと研究のための研究ではなく、実用化を重視し、人の役に立つ機械を創りたいと思って研究を進めてきました。そのため、企業と共同での研究開発にも力を入れてきており、そんな中から、マッスルスーツを事業化する会社をつくろうとの話が浮上して、2013年12月に具体化しました。今、ベンチャー企業の開発部分の多くを大学の研究室が担っており、学生たちは机上の空論ではなく、実際のニーズに即した改良改善に取り組むなどして、ある意味、真の教育が行われているとも考えています。

人の役に立つものを作るのがエンジニアの本懐

-今後のビジョンをどう描いていますか。 

 シンプルで使いやすいマッスルスーツを目指して、改良やシリーズ化に拍車をかけていきたいです。今、頭の中には10種類以上のアイデアがあり、そのアイデアを次々と形にしたいですね。マッスルスーツを世界中に広く知れ渡らせて普及させるのが、最大の目標で、学者として論文を書いて名を為すという世界からは、ちょっと離れたところでやっていきます。人の役に立つものを創るのがエンジニアの本懐だといった気持ちでしょうか。

-高齢化が進む日本の中でも、とくに東京の高齢化問題が大きな課題になると見られているので、マッスルスーツへの期待は高まるばかりです。

 先日、小池百合子都知事がマッスルスーツを導入している中央区の特別養護老人ホームを視察されたように、行政も強い関心を持ってくれています。東京では老々介護や高齢者・女性の各種作業を支援するといったニーズが、これから先、膨らむばかりなので、さまざまなニーズに応える製品群を提供し、地元、東京に大いに貢献したいと思っています。

東京の強みのひとつはメディアや展示会へのアクセスのしやすさ

-最後に、研究開発の拠点となる東京についてどのように感じられますか。

 多くの研究者、技術者が最先端のロボット関連技術に取り組んでいて、情報が集積しているのが大きな魅力です。メディアや展示会などにすぐにアクセスできるのもうれしいですね。当研究室は東京理科大工学部の移転に伴い、2013年に都心の九段下から、ここ葛飾区新宿に移りました。高齢化が進んでいる地域なので、地元の人たちから、若い学生がたくさん来てくれたと歓迎されているのも、うれしいことです。東京都の関係者の方々には、ぜひ、肉体労働や医療介護の現場で役立つ、マッスルスーツを始めとしたウエラブルロボットの普及を後押ししてほしいと思います。

略歴=1995年、東京理科大学博士課程修了。学生時代は人間の表情を工学的に認識し、その表情をロボットで再現するといった研究に取り組む。「認識」と「再現」の間をつなぐAI(人工知能)を研究するため2年間、スイスに留学。東京理科大工学部機械工学科の助手、助教授を経て、2008年に教授に就任。日本機械学会賞(論文)を4度受賞するなど研究成果は高く評価されている。
東京理科大学工学部 小林宏研究室
http://kobalab.com/

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